2004年10月02日

初めてのワクワク海外旅行! シンガポール編

・一日目および二日目 前編

 3時半に成田空港に行かねばならないらしいので一時に上野で待ち合わせる。無駄な時間を作ることをよしとしない僕は、ネットの路線情報で一時ぴったりにつくような電車を探して、それに合わせて家を出るが、家賃を入れてないことに気がつき、郵便局によっていたために七分ほど遅れてしまう。思うに不可抗力だ。ニヘラニヘラ笑いながら謝った。

 しかし旅行に出かける前からみんな疲れ気味だ。聞いてみるとひとりは昼の十二時まで酒を喰らっていたらしい。酒豪め。僕が酒を飲めないのを知ってそうやって自慢をしているのか。俺は酒を飲んでも飲まれないので旅行ぐらい行けるのです、とでも云いたいのか。そんな吹きすさぶ冷たい風を感じた。

 もう一人に聞いてみると、どうもデートだったらしい。サンシャイン水族館に行ったんだよー。ほらニモ!ニモ!とかいってへんなストライブ柄の魚の写真を見せられる。なんだこの魚は。不味そうだぞ。あとおそろいのネックレスを同じ日に無くしちゃったんだよとかやっぱどこかでつながってんだよとかいわれる。クサクサする。旅行中に葬り去る計画を立てる。事故を装う緻密な計画だ。しかし失敗した。

 ちなみに僕はサンクリ応募用紙を印刷するためのインクを買うために一人寂しく池袋を彷徨い、ジュンク堂によったら思わず本をいっぱい買ったりしていた。本屋には魔力があるのではないかと思う。財布の中身を抜き取る魔法だ。あと重力がある。引っ張り込まれるのだ。まるで人間ホイホイ。疲れた。

 それはそれとして京成線で成田に向かう。なんか遠いぞ。一時間半もかかる。さすが千葉だ。日本の車窓から見ていると、スゴイ勢いで田舎になっていく。どこだよここ、本当に関東か? そう思っていると、
「成田空港って千葉のどの辺だっけ?」
 とか聞かれた。半島のさきっちょじゃないと適当に答えた。んなこたあ知らんよ。

 成田に着く。羽田には何度も行ったことがあるが、成田は初めてだ。似たようなものかと思っていたが、全然違う。まず駅から出ようとするとパスポートを見られる。送迎人間はどうするんだろうと疑問に思った。そんな僕の問いかけは風に舞っている。
 空腹をいやすためカレーを食う。高い割に学食みたいな味だ。学食との差額500円を返せ。そんな心の叫びは誰にも届くことはなく980円払った。思えばこれが迫り来るマリアの恐怖の予兆だったのかもしれない、と言ってみよう。
 
 カウンタで航空券をもらい、数時間の待機後、手荷物検査に突入した。
 友人が金属探知器に引っかからないかとやたら不安がる。小銭は大丈夫か、ベルトが引っかかるのではないか、とか果ては、ズボンの留め金が引っかかるんでないかと云ってズボンを脱ごうとしだしたので、二人で必死に止めた。だれもパンツで通ってないって、と説得する。もしかしたらみんな天才には見えないズボンをはいていたのかもしれない。しかしそんなことは凡人の僕にはわからないのだ。
 ちなみに僕は引っかからないようにここ一週間鉄分を含むものは食べていない。用意周到とは僕のことだ。

 そしてつつがなく通過した僕らはつつがなく出国手続きを終えた。しかし、時間になっても搭乗が始まらない。ファーストとビジネスの客は搭乗したのにエコノミーだけ搭乗できない。なんか搭乗させれる状況じゃないとか言い出す。僕の鋭敏な頭脳は前の客がゲロ吐いたか、殺人事件の血痕がとれないのだろうと推測する。いつまで経っても始まらない。と、また放送がかかる。「君たちのようなエコノミーアニマルを載せるような飛行機はないんだよHAHAHA!ブチッ」唐突に切れる。なんで笑い声だけアメリカンなのか理解に苦しむ。

 数十分後搭乗が始まった。そして約七時間強後、シンガポールに着く。現地時間ですでに日にちが変わっている。なにがシンガポール三泊四日の旅なのかわからなくなってくる。シンガポール二泊二日、および飛行機の上で二日の間違えではないだろうか。是非公共広告機構に訴えようと思う。

 空港を出ると夜なのに熱い。さすが赤道直下。でも東京の真夏の方が熱いぜHAHAHA!
 引率の現地人アレックス(ガンダム)が空気圧シリンダーの音を立てながら現れる。僕らはバスに連れて行かれた。アレックスが順繰りに名前を呼ぶ。確認か、と思っていると誰かが応答する。
「オオォリィナサァァァイ!」
 バス内が騒然とする。
 どうやら間違ったバスに乗った人を呼び出していたらしい。戦々恐々とするが結局呼ばれない。変なプリントを貰う。詳しい予定表だ。なんだこれは。そう思っている間にバスが発車する。道が北海道並みに広い。そこを無数の変なタクスィーが猛スピードで走り去っていく。あとから聞いた話によるとシンガポーはタクシーがとても多いらしい。そして車は関税がかかってすごく高いらしい。
 ホテルに着くと二時を過ぎていた。日本時間で三時過ぎだ。いくら僕が夜更かしでもさすがに眠い。しかしチップが必要らしく、札を崩さなければならないので、セブンイレブンに買い物に行く。余談だがセブンイレブンは至る所にあった。趣のある街の風景を一発でぶちこわしにする素晴らしいカラーリングに全米が感動した。
 物価は大してかわらんのだなと思いつつ、セブンイレブンで怪しいものをいくつか購入する。そして食べなかった。いま東京のこの部屋にあけることなく放置されている。
 テレビを見るとNHKが映った。台風が微妙に不吉だ。
 寝た。
 三時に寝たのにその日は八時集合だという。六時半にモーニングコールがかかる。起きたが、眠い。二度寝だよ、そして本格的に起きた。ホテルの朝食はまあまあ。おみおつけが旨かった。僕は日本人だ。
 無料でパックに含まれるシンガポール定番ツアーのバスに乗る。バスに乗る前に変なパンフを渡される。そして恐怖のマリアと対面する。人の良さそうな近所のおばさんという感じだ。五十八歳独身。歳にしては若いと、おばさん好きの友人がそわそわする。おいおい君には彼女が居るだろう。あ、そういえば年上でしたね。

 マリアがなんだかやたらと笑う。意味もなく笑う。日本語の発音を笑われても笑う。客商売って大変ね。しかしマリアが笑うとスピーカーからモブの笑い声が聞こえる。アメリカのコメディー番組みたいだ。つまらないところまで一緒だ。
 とりあえずシンガポー一高い山といえないけど山に連れて行かれる。セントーサ島というリゾート地が一望に出来る展望台らしい。しかし行ったた先はここは明らかに展望台ではない。山の中腹の休憩所だ。客の間にかすかな疑問が生まれる。だがしかし、それはまだかすかだ。
 有り得ないほど見晴らしの悪い場所からみんな必死で写真を撮るが、木々が邪魔で全然良い写真が撮れない。みんながんばれ。超がんばれ。僕も数枚とったがあとで消した。デジカメって便利ね。イシカワさんありがとう。

 そして再びバスに乗ると、バスは坂を下りだした。ああ、やっぱりアレが「展望台」だったのね。そんなみんなの気分をエンパシーで感じたことは秘密だ。そしてマリア。スゴイ勢いで意味もなくHAHAHA! と笑いながら、素晴らしいプッシュでオプショナルツアーを進めてくる。スゴイ圧力を感じる。値段を見る。たけえよ。200Sドルとか全然払えません。ふざけるなよー。しかし進めてくる。スゴイ。もう断られることなんか考えてない。たのしいわよわたしといっしょにチャリンコあしつぼまっさーじよかわくだりよノーパンしゃぶしゃぶよHAHAHA!(ワハハハハ:スピーカから)ニポーンのおきゃーくさんのーぱん大好きねHAHAHA!(ワハハハハ:スピーカから)チャリンコ楽しいよみなさーんわらいっぱーよHAHAHA! チャーリンコみんな徒歩でいけないとこ行くね。赤線地帯、ホモ地区、インド人街あるよ。わーたしのおすすめ、私とチャリンコ、ノーパンしゃぶしゃぶ(HAHAHA) 私みんなが一番たーのしめるのかんがえてるね。うそつけ。
 それはともかくとしてほとんど寝てないので眠い。

 川に着くとボートに乗せられる。素晴らしい揺れだ。あと十時間続いてたら吐いている。そして川を下り、マーライオン公園に連れて行かれる。マーライオンはシンガポールのシンボルらしい。初めて知った。旅の予習をしてこなかったのがバレバレだ。
 マーライオンは頭がライオンでそのしたに魚の尾っぽがついているという、考えた人がトリップしていたとしか思えない代物だ。なかなか印象的な空想動物だ。僕がそこで見た母マーライオンと子マーライオンは口から何かはいていた。口から排泄するとはなかなか器用な動物だ。見直したぞ。

 そこで二十分ほど放置される。何もすることがないので写真とって、土産屋冷やかして集合場所の橋の下で涼んでいると、恐るべきマリアがやってくる。スゴイ形相だ。オプショナルツアーを進めてくる。スゴイ。勢いで契約してしまった。チャリンコだ。すぐさまそのばで100ドル取られる。一旦登録したらキャンセルできないね(ニヤリ) なんだその笑いは。そうか、これが格安ツアーのやり口か、くそう。 だがしかしその考えは甘かったことをあとで知らされる。

 ものすごい押し切られた感に微妙な気分になる。しかも僕が一番最初に心をおられてしまったような気がするのでちょっと申し訳ない。しかし赤線地帯に心惹かれてしまったことはヒミツだ。

 マーライオン公園を出たバスは不可思議な場所に連れて行かれる。団地だ。現地人が密集している団地に連れて行かれる。ジャランジャランよ! 壊れたのかマリアが意味不明の事を言い出す。まあ観光客を団地に連れて行くのも理解不能だ。物干し竿を窓から出して洗濯物を干しているのは確かに新鮮ではあるが。
 シンガポーの歴史をザット説明したあと、団地地下にあるの市場に連れて行かれる。臭い。スーパーの三分の一とか行っているわりにはあまり安くない。でもかえるとか売ってた。
 そして団地終了。いまだに何故団地を見せたのか理解に苦しむ。

 団地をでたバスは一路何処かに向かう。そう、免税店だ。しかも宝石店だ。その間にもオプショナルツアーの宣伝は続く。
 そして搬入口みたいなところにバスが止まり、裏口のようなところから店に入る。中にはいるとショウケースに宝石がいっぱいいっぱいの普通の宝石店だ。しかし表口のようなところに繋がっている扉は見つからず、おそらく観光客専用の現地人が使わないところなのだと推測される。値札がどれだけ違うのか気になるが、確認するすべはない。
 友人は彼女へのプレゼントを探していたが、手を出せてなかった。だいたい格安ツアーに来ている若者にこんな高級品を買うお金あるんかいとおもったのだが。まあ、なんというか。

 移動中、土産物注文の紙が配られる。HISで買えば免税店よっりやすいよー。とかマリアに云われる。HISが連れていく店では何もかわんぞと決めていたのに、口車に乗せられ買ってしまう。チッ。

 そしてバスは次に免税店に行った。革製品の店だ。ワニの剥製などがあってちょっと心躍る。しかしおみやげを買う気にはなれない。友人は宝石店に合ったのと同じようなのが超格安で売っていたのを買っていた。無駄金使わないで良かったね。この店があとなのは、これを見たら宝石店で買わなくなるからじゃないかと推測し合う。

 次は絹製品の店だ。
 もうなんでもござれの気分だ。きっと旅行代理店は観光客を店に連れて行くことで、店から金を貰っているに違いない。というか確実にそうだろう。まあ確かに安いしな。
 しかし入ったとたん絹のトランクスの宣伝をしていて、チョットビックリする。男の局部を守る絹製品をおばさん二人が素晴らしいプッシュで進めてくる。華麗なフットワークで回避した。
 なんか友人がそわそわし出す。もうなんかすごい挙動不審。入り口付近のトランクス売り場をちらちらちらちら見まくり。見過ぎ。ちょっと落ち着けよ。なんか肩をたたいて、さわやかな笑顔で「いっしょにトランクスかわん?」とか聞いてくる。どうぞ買ってらっしゃい。こちらも笑顔で送り出す。一人で買う勇気はなかなか出ないらしい。でも正直僕はいりません! 落ち着くためにかキーホルダー三個で十ドルを買っていた。しかしやはり諦めきれず、魅惑のフットワークでトランクス売り場に向かっていった。その隙にもう一人の友人に彼女に着せるためのチャイナドレスを激しく勧めていたのだが断られた。秋葉で買うよだって? ケッ一度も行ったことがねーくせによー。ドンキにでも行けよ。
 友人がトランクス片手に戻ってきた。二五〇〇円を二〇〇〇円にまけてくれた! ってスゴイ笑顔。もうまぶしくて正面から見られません。カァーーッ、そいっつあすばらすぃーなー。
 彼のあだ名をシルクとする。これは私の中学校の同級生に由来するが説明が面倒だ。

 バスの中でキーホルダーもっと安く販売しだして友人がへこんでいた。

 そしてようやく店以外の場所に連れて行かれる。国立植物園らしい。日本と生えてる植物がちがうのでじっくりみられるのは正直うれしかった。だがそんなささやかな喜びもマリアによって打ち砕かれる。ニィィジュップンでもどできなさいよぉー。ごぉふんあるいたら池つくね。池ついたら戻るね。まよたらダメダメよ。
 いや、片道五分やったら往復十分やんと心で思うが、聞き取れなかった部分でなにか大事なことを云っていたのかもしれない。日本語リスニング能力の低さに絶望する。
 植物園は変な植物や気持ち悪いぐらいでかい葉っぱを堪能するが、所詮二十分で何を見れと?

 バスの中でカメラウーマンが写真を売り出す。思わず一枚買ってしまったが、600円は高い。しかも自分の逝け面っぷりは別に楽しくない。

 次は飯だ。飲茶だ。操気弾とかいってまけていヤムチャと同じ漢字の飲茶料理だ。おい、アンタ……足下が、お留守だぜ……。
 バスを降りると子供が遊んでいた。店にはいると何か非常に微妙な空気を感じる。しかしそれはそれとして、気にしないことにする。いかにも中華な円形のテーブルにすわると、まず初めにスープが来た。大きい器で持ってきてテーブル上で取り分けてくれるのだが、日本では有り得ないぐらいこぼす。とにかくこぼす。しかし平然としている。さすが中国、あなどれないぜ(シンガポーだけど)!
 そして料理が出てくる。いっぱい出てくる。すごい出てくる。
 とても九人では食えないぐらい出てくる。しかもどれも油たっぷり。そして味は微妙だ。正直美味しくはない。不味くもないけど。正直ウーロン茶が一番旨かった。
 さらになんというか油が悪いのか、全然交換してないのかわからないが、お腹がいっぱいになる前に胸焼けがしてくる。気分が悪い。なんだこの料理は。しかももう食えないのにおじいさんおばあさんが、若い人がいっぱい食べないとねえ、とか云ってくる。ふざけんなよ、てめえらが食いたくないだけだろ。食べ物残すのが気分悪いから僕たちに押しつけようとしているだけだろ。ケッ。
 丁重に断る。
 よく店を見てみると、明らかにファミリーレストランだ。カレー喰ってるインド系居るし。単にファミレスの飲茶喰っただけらしい。まあ格安の無料ツアーだしな。しかしバーミヤンのほうがだいぶん美味しかった。
 なんか微妙に場の雰囲気が悪くなる。おばはんが台湾で喰った飲茶料理はうまかったわとか文句言い出す。んならかねだしてもうチョットましなツアー行ったら良かったんではないでしょうか。
 気がついたらみんなバスに戻っていた。

 そして遂に究極の免税店に連れて行かれる。シンガポーで一番でかいらしい。まあちっこい国だしな。淡路島と一緒だって。ぷ。
 ブランド品とかブランド品とかブランド品とか化粧とかには興味がありません。冷やかして値段見るだけ。たかいよ。かえないよ。無理よ。無理無理よ。友人はブランド品のブースに突入するが僕はポテンシャルを超えられず外でうろうろする。そもそもぱっと見、女物しかなかったし。
 この店で悟ったのだが、格安ツアーで観光に来る客がブランド品なんか買うかよ、とか思っていたが、逆に格安でシンガポーに来て浮いたお金でブランド品を買いあさりに来ている人がいるんだな。ブランド品なんて格安ツアーなんて使わなくてもいくらでも金が使えるぐらい、金持ちであれば買えば良いと思うのだが、いろいろな考え方があるものだ。
 付け加えると確かに土産物のお菓子はこの免税店に比べれば、HISのほうが安かった。だがしかし、だがしかし……!!

 以上一日無料定番ツアーってお店巡り編
 (面倒じゃなければ)まだまだつづくよー