■三谷 直之、米田 聡「パソコンネットワークの仕組み」
TCP/IP、Windowsのネットワーク、インターネットの仕組みについて「これ以上やさしく書けない」ぐらい易しく書いた本。確かに分かりやすかったです。
実のところネットワーク関係は、というか、もあんまり得意ではないので、時々読むんですが、実践が伴わないので、すぐ忘れます。で、また時々読みたくなる。
繰り返し。
この本については僕には、Windowsの共有の話が目新しかったです。
昔ダンジョンシージというゲームを自分がホストになって友人とネットワークプレーしようとしたんですが、ポートが分からなくて、ポートの開け方も当然分からなくて、NATも静的IPマスカレードも全く分からなくて、挫折した覚えがあります。
その頃を考えれば分かるようにはなっているな、とは思います。
pingも使えるようになりました。
■速水 健朗「自分探しがとまらない」
古今東西の様々な自分探しと、そのルーツについてサーベイしてまとめ上げた本、面白かったし、内容も濃いし、なにより読んだら何か言いたいという欲求に駆られる時点で負けた気分ですよ。
個人的には所謂ところの「自分探し」はバカにしているし、且つまた周りにそんな人がいないので心おきなくバカにしていると公言してしまう。が、しかし、そういうわかりやすく「自分探し」ではないがそれに類するものが違う顔をして忍び寄ってくるのにはゾッとする。
とりあえず就活はアレだ。就活本は確かに気持ち悪い。ゾッとする。あんなものを読んで感動したり、まに受けたりするのはガードが弱いというか、心弱りすぎだ。就活の不安につけ込んだああいった輩が商売しているんだからどうかと思う。
なんというか自己啓発が嫌いだ。
宝くじは買わないと当たらないよ!!
買うだけ損だけど!!
みたいな感じがする。期待値を考えてという話ですが。
夢を持てとかやりたいことをやれ! とか言っている人はその空っぽの頭を飢えているウサギの男の子にあげて、パン屋で新しいのを一つ買ってきた方が良いとおもう。それともやれっていうのはあれか、二人の同意がないとつかまったりするアレか?
やる人はやらずにはおられないからやるわけだし、やらずにはおられないわけではない人が、そういう人を見て焦るような風潮をつくっている人間は、大罪人だ。
大事なのはやりたくないことや、なりたくない状態をどうやって避けるかだろう。
本の内容から大分ずれた感ですが、なんというか、人に不安をつくり、煽り立て、それにつけ込むようなやり口は、どうしても好きになれない。商売のやり方の鉄板なのかも知れないが、やはりどうかと思う。
自分らしさ。自分らしさ。自分らしさ。
家でパンツ下ろすのも、外で人と話ながら外面取り繕うのも、ブログで糞みたいな文章を垂れ流すのも、やらなければならないことに取りかかれないのも、やった方が良いことをやらないのも、記憶力が悪いのも、オタクなのも、いい加減なのも、自分らしい自分らしさ。自分は状態。
状態は変わりうるし、厳密な不変量は存在しない。
まあただ自分の判断の根っこ近くにあるものは分かる範囲で自覚しとくと便利かなとは思う。
成功哲学やら自己啓発やらライフハックソやらのベースになっているというニューソートの話はちょっと面白そう。
■川端 裕人「動物園にできること」
著者がアメリカの動物園を色々と取材しながら知ったこと、考えたことを幾つかのテーマにわけて書いている本。
これはすごい。読んでココまで衝撃を受けた本は久しぶり。当たり前のように街に存在する動物園に、こんな興味深い話があることを知らなかった。本を読むのは自分の無知を確認することだと本当に思う。
まず、本で書かれているアメリカの動物園の取り組みが、単純に面白い。例えばランドスケープイマージョンというものは、動物の展示に際し、その動物のもともとの生息地を模した空間を作り、柵をなくし堀を隠し、まるで自然に存在する動物を見ているかのような錯覚を客に与える。あるいは、動物が限定された空間の中でも良く生きていけるように、遊びを与えたり、あるいは餌の与え方を工夫することで、動物本来の行動を引き出したりストレスを減らしたりするようなエンリッチメント、などといった様々な展示の工夫は読んでいるだけでも、心そそられる。そして、実際に見に行った人は楽しむのではないだろうか。
しかし、それらは、実際どの程度意味のあることなのか?
あるいは時に動物園は希少種を守るために力を尽くす。日本ではトキの繁殖などがニュースになっていた。アメリカでは、絶滅寸前のコンドルの保護、繁殖を行い、野生復帰を行ったりする。
それは素晴らしいことだが、多大なお金をかけて、必ずしも成功率の高くない繁殖、野生復帰はどの程度やるべきだろうか。絶滅の危機に瀕する動物種は多く、全てを同様にすることは出来ない。
それならば、人間が破壊し、分断していった自然を守るべきか。どう、動物園は関わるべきか。
動物園の果たすべき役割とは何か。客を楽しませること。啓蒙すること。研究すること。希少種を保護すること。繁殖させること。あるいは、生息地を守ること。
そういった数多くの、時には相矛盾し、多くの人間の考えがぶつかりあう中で、誰もが悩みながら最善の姿を模索する動物園の取り組みを作者は一人称視点から鮮やかに完結に書き出す。
そして、作者はそれぞれの取り組みに、感銘を受けたり、あるいは反対しながらも、どれにも深く入り込むことはない。適切な距離を保ちながら、思い入れありながらもするどく批判的な視点で記述していく。ある時は、動物に固有の権利を認めるアニマルライツの運動家とともに動物園を見て回ったりする。そこではアニマルライツの運動家もまた、動物園への単純ならざる思いを抱いている。
この本は作者の見たもの、考えたことを書き、動物園という一つの大きな問題を提起しているが、こうであるべきという答えはない。また、この本が出たのはもう十年近くも前であり、現状は大きく変わっているのだろうと思う。
興行としての動物園しか知らなかった自分にはいろいろ衝撃な本だった。因みに僕が最後に動物園に行ったのは何年か前で旭山動物園が最後だった。ちょうど来場者数が上野公園を越えたということで話題になっていたころだった。
面白い展示だとは思ったが、モンキー! と叫ぶ子供と、自分は何も変わらなかった。
■小島 寛之「なぜ数学でつまずくのはなぜか」
しまった、数学はもっと楽しめたかも! と思った。いや、前はこんな風に楽しかったのかな、かも知れない。
高校までは数学は割と出来る方ではあったんですが、大学になってからは……
まあ、なんかアホみたいに出来る人もいたし、授業もアレでしたし、専門になってからはあんまり難しいことはやらないので、なんだかいつの間にやら苦手意識が付いてしまったんですが、久々に心が洗われるような気分になる。
この本は、塾で子供に数学を教えてきた著者が、代数や幾何などで子供たちが何故躓くのか、そしてどうやって考えるのか、あるいは人間にとって数学とはどのようなモノなのかについて書いている本。
教わってからずいぶん立つ人間にとっては、完全に当たり前としか思えないけれども、マイナスの数字とマイナスの数字を書けるとプラスになることでさえ、自明のことではない。ましてや代数学ともなれば、分からないことは往々にしてある。中学幾何かは不自然すぎてやるのが苦痛だったりする。象はネズミより大きいぐらい当たり前なことを、なぜ回りくどいやり方で証明しなければならないのか。見れば分かる、じゃないか。
そういった数学を初めて学ぶ人たちのつまづきやいらだちを丁寧に拾い、実際はどうなのか、どう考えるべきかについていろいろなアプローチで上手く説明している。このあたりはさすがたくさんの子供を教えてきただけのことはあるなあ、と唸らされてしまった。
関数とグラフを結びつけるのは当たり前ではない! というのは個人的には大事なのではないかと思う。
しかし自分が中高、数学でつまずかなかったのは、単に考えなかったからではないのかと、ちょっと思わされてしまった。
もっとも、この本自体は教える側に向けて書かれているのかな、という気はちょっとする。著者の数学への考え方を書いているのだとは思うけど、アフォーダンスやウィトゲンシュタインの話が出たあたりは、僕にはウッとなってしまった。僕の問題かも。
あと、ノイマンの自然数の定義は、面白いなあと思ったんですが、なんだか腑に落ちない。なんだろうなあ、と思ったんですが、当たり前のように離散的な見方が使われているのが変な感じがする。なんだろう、自然数的なものを使って自然数を定義しているような感じがして。というか自分があまりに当たり前に捉えているモノを定義するのに使っている道具が、適切なものに思えない、という感じ。
というと自分は集合がわかってないのかー。まあ、勉強してないしなあ。
いやしかし、必要にならない限り勉強し直す気にはなれないけれど、もうちょっと娯楽としては数学を楽しめないものかと思ってしまいました。良い本でした。
■遠山 啓「数学入門 上」
というわけで、上記の本で言及されていた数学入門を買ってみました。初版は1959年! 歴史のある本です。数学が好きな人は結構小学校とか中学校で読んでいるという情報を仕入れました(サンプル数十以下)。
いやー濃いです。内容がみっちりつまっている。入門は入門かも知れませんが、中々容赦在りません。読めば面白いですが、結構わかんなくなったりします。しかし面白い。
数学的な内容の面白さも在るのですが、博覧強記な作者の豊富な話題が面白い。特に最初の章、数のあけぼのの面白さは感動ものです。そもそもの数という非常に根本的な抽象化、二つの卵と二日という、全く違うものを数で抽象化して同じように扱ってしまう、数の面白さから始まって、二進数の文明、四進数、五進数の文明、はたまた六十進数のそれなどから現代に至るまでの数の進化が書かれています。
離散量と連続量、負の数、分数、有理数無理数、そして虚数にまで数の体系が拡大することで数が四則演算とその逆演算に対して閉じるまで。
数学は学校で教わると歴史の空気はぬぐい去られ、もとよりそうであるもの、を学んでいるような気がしてしまいますが、この本を読むと数学が長い間を書けて辿ってきた道のり、発展の歴史、つまるところ数学が静的でまるで天から振ってくるものではなく、人の泥臭い営みから生まれてきたものであること、そしてそのダイナミックな変化を肌で感じることが出来ます。
他にも例えば中学で習う、ユークリッド幾何学。数学においてアレがなぜ重要な意味を持つのか、「原論」が聖書に次いで売れた本であるのは何故か、そして何よりなんであんなものを勉強しなければならないのか、もわかる。正直ユークリッド幾何を歴史や、数学の中で持つ意味から切り離して教えるのは、誰にとっても不幸だとしか思えない。だってあんなにつまらないの理由もなく教えられても困るし。高校行ったら使わないしね……。
まあ、そのあたり前提に頭に入れててもユークリッド幾何の章はつまらなかったのでとばしましたが。
しかし、自然数は一貫して神秘だ。
■野崎 昭弘「不完全性定理」
さらについでに、どっかの書評サイトで中学生でもゲーテルの不完全性定理がわかる! と煽られていた本を読んでみました。
そうか……僕は…………
というより、知らない話題がばんばん出てくるので、腰を据えてちゃんと読まないと分からないな、という感じです。さらりと読んだだけで分かるほど理解力があるわけではないので。
本のつくりとしては、ユークリッド幾何と論理学の成り立ちからはじまって、集合論、形式的な証明、超数学、不完全性定理という流れで、歴史を辿って基本的な知識を追いながら本題の説明に至るんですが、形式的な証明の話から読み方が雑になり、超数学で話が追えなくなり、不完全性定理では、とりあえず読んだぜ! という感じに。
まあ、雰囲気は、分かったような分からないような。途中まではかなり面白かったんですが、もうちょっとちゃんと読まないと分からないなあ。
本中にも書かれていたけど、ゲーテルの証明と情報分野への近さを感じたのは、興味深かった。あんまり自分が学んだことのルーツとか知らなかったので。
あと、スティーヴン・バクスターの「ジーリー・クロニクル」が前よりもちょっと楽しめるようになりました。それだけでもちょっと嬉しい。
■西田 宗千佳「美学 VS 実利」
久多良木健クロニクル。すごいタイトル。
プレーステーションシリーズの中心として、ソニーグループの一つの顔として有名な久多良木健の、プレーステーション以前からPS3までを書いたドキュメンタリー。いやー、コレは面白い。
ネットでは発現をおもしろおかしく取り上げられることも多く、毀誉褒貶の激しい人ではありますが、これを読むと思っていた以上にただ者ではなかったのかと感心してしまった。
技術者としても傑出しているし、ただ優秀なだけではなくビジョンが確固としていて、かつ特異だ。ゲーム業界やコンピュータに多少なりとも関心が在れば、読んで損はないと思う本だった。
本筋とはそれほど関係ないけどPSPの話。
PSPの□ボタンは発売当初散々設計の問題だと言われていたが、製造の問題であり、しかも0.6%程度だという話だった。XBOX360スキーに謹んで申し上げたい気分だ。関係ないけど。
まあ、なんというか。
どうでもいいんですが、PSPをAVプレイヤーとして売るのは、画面と十字キーとボタンという外見にした時点で不可能な気がする。
いろいろ言われたけどPS3もある程度定着している。Wiiだって言われているほど盤石でもないのかなという気はする。PS3の既知街じみた性能が発揮されるソフトが出てくるようになれば、PS3ももっと面白くなるんだろうなあ。
というわけで、ちょっとPS3が良いなあと思ってしまった。
■清水 美和「「中国問題」の内幕」
いやあ、そういえば中国ってサッパリ知らないなあ、とちょっと思ったので読んでみた。なんというか、新聞も読まないし、興味もなかったので、自然と目に入るネットでの脊髄反射的コメントしか見なかったんですが、それもなんだよなと。
共産党の政治を中心に、経済とか報道とかをザックリと。
ヘーとしか感想がないですが。あと一文字名字がいっぱい出てくるので、だんだん話が追えなくなります。
しかし政治は奇々怪々だなあと、改めて思う。もう、サッパリ何が何だか分かりません。腹芸っていうんですかね、こういうのって。
まあしかし、農業戸籍と非農業戸籍さえ知らなかった僕には、知っていることがなかったので、お腹いっぱいです。
んー文革の読みやすい本ないかなあ。
■藤村 幸義「老いはじめた中国」
中国の高齢化を扱っているようなので結構面白そうだなあと思って読んでみた。政治じゃなくて経済の話が中心なので読みやすい。
一人っ子政策の結果、日本以上に極端な年齢別人口分布になった中国がどうなるのか、とか、いろいろな事の結果出てきた歪みやら格差やらはどーなるんでしょーねーという内容。すみません適当にまとめました。
ちょっと面白かったのは中国で「中国的品格(中国の品格)」という本が売れているという話。同じような本が売れているのかなあ。どちらも読んでいないので何とも云えないけど。