最初話を聞いたときは、本当かと疑ったし、実際手に取るまで疑いは晴れなかったわけですが、実際に手にとってしまったからには信じざるを得ない。
まさか今世紀中にエルリックの新刊を手にすることがあるとは思っていませんでした。
このなんというか、身もだえするほどの喜びを誰かと分かち合いたい気もしますが、分かち合う相手もいないのでここで発散します。
すばらしい! グレイト!! イエッ!!
たとえアリオッチがアリオッホになっていたとしてもそれは些細なことです。全然OK。ファンタジーブーム万歳、再版ブーム万歳です。実際再版が多いのは非常に嬉しいですよね。ビックスリーほどには知名度が無くても、間違えなく一流のSF作家の作品でも手に入りづらいものが多かったので、聴いたことはあるけど読めない作品が読めるようになるのは嬉しいものです。エルリックサーガ(永遠の戦士エルリックにシリーズ名が変わっていますが)というかエターナルチャンピオンシリーズは全部持ってはいますが、新装版になって誰でも読めるようになるのはファンとしては喜ばしいものです。まして未訳のものまで訳されることになっているのですから堪えられない。
未訳のものがでるのは十一月。二ヶ月に一巻ずつ発売していく模様。ああくそ懐かしい。耐えられん。今日も少し読み始めたのですが、涙が出そうになったので読むのを止めました、もうちょっと落ち着いて読めるようになるまで置いておこう。
ただ一つ、こう胸がかきむしられそうなほど残念なのはエルリックの装丁画が天野喜孝ではないということです。作者をして世界でもっとも美しいエルリックと呼ばせたのも今は昔で現在の天野喜孝の絵がエルリックに合わないのは、というか七巻八巻の時点でかなりあっていなかったのは明らかなのでそれは仕方ないのですが、僕の絵的な嗜好を決定づけたものがなくなってしまうのは悲しいです。紅衣の公子コルムにしろエレコーゼサーガにしろ、エターナルチャンピオンシリーズの天野喜孝の挿絵は未だにそれ以上のものを見たことがないほど素晴らしいものでした。天野喜孝が挿絵画家として一番脂がのっていた時期の作品だから当たり前なのかもしれませんが。現在の絵も素晴らしいことは疑いないのですが、個性が先に立ちすぎて挿絵としては……。
新装版の表紙絵もよくできてはいるのですが、というか誰が描いても納得は出来ないんだろうな。そういえば挿絵がないのが予想外でショックだった。ハヤカワに限りませんがもうちょっと積極的に挿絵を入れてもいいと思うんですが。
というわけでエルリックの新装版、メルニボネの皇子を買ったついでにいくつか気になる本も購入しました。まずステーブルトンの最後で最初の人間。前も読もうと思っていたけど忘れていたのを購入。池上永一のシャングリ・ラ。フレドリック・ブラウンの未来世界から来た男。あとは漫画の俺と悪魔のブルーズ。発表終わった勢いで散財。さあ、きちがいになりなさいも買おうかと思ったけど、文庫じゃなかったので止めた。
しまった。ラファティの次の岩につづくを買おうと思っていたのに忘れてた。
ついでにSFが読みたい2006の雑感。
ベストSF2005は日本の方は読んだことあるのは、サマー/タイム/トラベラー、現代SF1500冊、ある日、爆弾がおちてきてぐらい。もともと日本のそんなに読まないからこんなものか。一位は最近評判の高い小川一水。妥当だとは思うけど二三冊読んだところ今ひとつ肌に合わなかったので読む気はしない。二位のデカルトの密室は割と好みっぽいので文庫になったら読んでみよう。ランクインしているので気になるのとしては、もう買っちゃったけど三位のシャングリ・ラと十位の四畳半神話体系、十一位のベルガ、吠えないのか?、十七位の沼地のある森を抜けて、かな。十三位のバースト・ゾーンはクチュクチュバーンと同じ作家ですね。またアレと同じ雰囲気っぽい……。あとはずいぶん前の作品だけど神狩りがちょっと読みたい。
海外編で読んだのはディアスポラ、太陽レンズの彼方へ、反対進化、マジック・キングダムで落ちぶれて……アレ、やっぱり少ない。ディアスポラが一位なのは妥当というか、これ以外のものが一位になる状況が想像できない。サイコロ本の啓示空間は三位か。面白いのかなあ。しかしアグレッサーシックスがランクインしていないのが納得できない。マッカンドルーの新作がランクインするなら間違えなくしてそうなもんだけど。シオドア・スタージョンはやたらと評判がいいけど、読めないんだよなあ、この人の。どうしても途中で投げちゃう。何処がいいのか今ひとつわかりません。
ランクインしている中で気になるのはどんがらがん、宇宙舟歌、アジアの岸辺、火星ノンストップ、オルタード・カーボン、すべての幻は、キンタナ・ローの海に消えた、といったところでしょうか。とはいえ日本のにしろ海外のにしろどうしても読みたいというのはないですね。というかどうしても読みたいのは読んでるし。
リアルフィクションはいい加減な付け方だな。用はライトノベル作家が書いていればリアルフィクション。最近の日本のSFの新人はだいたいライトノベルから来ているような気が。電撃とかライトノベルレーベルでは受けなさそうなのをハヤカワとかが出している感じがする。いや、それは全然OKなんですが、ハヤカワとかの新人発掘ってどうなってるんだろう。んーまあどうでもいいや。
池上永一のインタビューは面白かった。これ読んでシャングリ・ラを購入。
サブジャンル総括。ライトノベルSF……まあ、どうでもいいや。伝奇アクション&異世界ファンタジー……まあ、どうでも。そういえばよくわかる現代魔法シリーズはRubyの作者のまつもと ゆきひろが言及して多様な気がするので、きにならなくもなくもなくもない。海外ファンタジー、ホラー、ミステリ、ノンフィクションもどうでもいいなあ。
コミック。知らないのばっかり。絶対可憐チルドレンはこないだ読んだら面白かったので買おう。
アニメ。かみちゅ! はSFアニメだったのか! そんなこと……なくもないか。火星人とか出てくるし。あとはどうだろう。アクエリオン、エウレカセブン、ノエインは最初の方だけ見たけど駄目だった。ガン×ソードは見てみたい気がする。倉田英之だし。
古橋秀之のケイオス・ヘキサ三部作のどれかかタツモリ家の食卓あたりをアニメ化してくれないか、どこか。
2006年の出版予定。
ハヤカワ。エルリックは当然買うので、おいといて、おれはミサイル、マルドゥック・ヴェロシティ、人狼日記はでてほしい。とくに古橋秀之の人狼日記は。あとは岸本信司のスペースローブ。リングワールドの王座は文庫にならんかなあ。
角川は池上永一のレキオスが文庫になるようなので買おう。山本弘の新刊も。
河出書房新社。ル=グィン、ブラッドベリの新刊はチェックしよう。奇想コレクションでイーガンが出るのはいったい何時なんだろ。銀河ヒッチハイク・ガイドシリーズの新刊が四月から出るそうなのでこれは買う。
最近かなり気を吐いてる国書刊行会。プリーストの短編集、ベスターの長編はチェックレムはどうしようかなあ。ここのは文庫じゃないから高い上にしまうのが面倒。
東京創元社。ホーガンの揺籃の星の続編が出るみたい。あとは、とくにないなあ。キャプテン・フューチャーもまあ、いいや。
そういえばブラッドベリの雷のとどろくような音、が「サウンド・オブ・サンダー」というタイトルで映画化したみたいなんですが、予告編を見た限り耐えられそうにないので止めよう。どうしてああなるんかな。
ついでに最近読んだ本。
フレデリック・ポール、異境の旅人。
異星人に育てられた地球人が、地球に帰ってきて……みたいな話し。悪くはないんだけど、フレデリック・ポールの作品は今ひとつぴんと来ない。
コリィ・ドクトロウのマジック・キングダムで落ちぶれて。
フリー・エネルギーと不死の技術が確立され、貨幣経済の変わりに人の評価<ウッフィー>がそのままお金の変わりになる<ビッチャン世界>で、ディズニーワールドのホーンテッド・マンションで働く主人公が、ホーンテッド・マンションを改革しようとする他の勢力と争う話。
イーガンのボーダーガードみたいな世界の話なんだけど、やっているのは遊園地のアトラクション内の勢力抗争と実にみみっちい。だが、そこがいい。ポスト・サイバーパンクの良作といってもいいんじゃないだろうか。科学技術で考え得る何もかもが実現された世界で、人間はいったい何をするのだろうか、という事なんだと思う。この本の答えは何も変わらないだけど。宇宙の熱死が語られるような世界でそれは寂しい気もしますが、これもありかなという気にはなります。あと、タイトルの通り主人公が見事に落ちぶれていくのが見てて切なかった。