2005年01月12日

ファフナーについて

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冲方丁の蒼穹のファフナーを読みました。
とても香り高いことで(私の中では)有名な同名アニメのノベライズ作品です。作者はアニメで文芸総括という何をやっているのかよく分からない仕事を担当し、途中からは脚本を強奪して作品を自分色で染め上げてしまったそうです。残念ながら私は前半九話までしか見ていないので、脚本が変わった後のことはよく分かりません。
さて、この小説は一応一巻で完結という事になってはいますが、扱っている部分はアニメの前半、ちょうど私が見たところをノベライズしたものです。ちなみに私のアニメ前半の感想は、この作品は何というか、とても難しい作品(楽しむことが)だなあというところです。
しかしこの小説では一部設定の変更を含めて、アニメとはかなり違う印象を受けました。
以下に箇条書きで変わっていると思ったところをあげます。

・黒髪病弱の萌えキャラと見せかけてじつはストーカー気質のサイコさんだったという深みのあるキャラが、普通に萌えるキャラになってしまった。
・とてもかわいいメガネキャラがちょっと出であっさりと死ぬという戦争の残酷さを演出するシーンが、メガネキャラの心理を掘り下げ、感動的に殺すことで台無しになってしまった。
・大爆笑自爆シーンが省略されてしまった。
・神秘の島を演出する、人間って島の地下で栽培されているからいくら無駄死にしても大丈夫という演出が無くなってしまった。
・たとえ友人を見捨てでも知らない人を助けるという博愛主義の主人公の性格が、普通の行動をとるようになってしまった。
・主人公なら突然ロボットにのっても何故だか操縦できるというアニメ界の伝統に則っていたのに、理由を解説することでアニメの伝統にケチをつけてしまった。
・軍隊とはいえ上官の意見に従わなければならないと云うのは非人道的である、という制作者側の意図を込めたキャラクターの行動がゆがめられ、みんな上官に従うようになってしまった。
・意味不明かつ理解不能な多数の演出に、地の文で解説が入り理解できるようになったせいで、作品を覆う不思議な雰囲気が損なわれてしまった。
・バカってマジで殺したいよね、という強いメッセージ性が薄れ、登場人物がみんなまともな行動をするようになってしまった。
・普通に面白いのでネタにならない。

とまあ他にもあるでしょうけど、問題点はとりあえずはこんなところです。付け加えて云うなら、最初から冲方丁が脚本やれば良かったのにということと、小説版の設定では片目がつぶれているって書いてるんだから挿絵はちゃんと反映しろよということでしょうか。
何にせよアニメを見た人は一読の価値はあると思います。
逆にアニメを見ていない人はこれだけ読んでも物足りないと思います。敵の正体すらちゃんとはわからないし、戦争の行く末は全く分かりませんから。私も物足りません。
おそらくこの小説版ファフナーは作者が、もし自分が脚本書いたらこうなったんだ、と示すために書いた小説なのではないかと思いました。