2006年10月13日

クリストファー・プリースト 「魔法」

「逆転世界」がクソ面白かったので思わず脊髄反射で買って読んでしまいました。えーと発行順で言うと、「逆転世界」→「魔法」→「奇術師」ですね。プリーストが日本で注目されるようになったのが、僕もそうですが多分「奇術師」からで、「魔法」は一部の層に大好評ながらも一般層には受けなかったようです。


爆弾テロに巻き込まれて重傷を負った報道カメラマンのグレイは、事故以前一定期間の記憶を失っていた。保養所に入院してリハビリをする彼の元に、恋人だったという女性、スーザンが訪ねてきた。彼女との会話を通じて彼は失われていた期間の記憶を思い出していく。

そんなわけで、最初はリハビリ中の主人公とかつて恋人だったという女性との再会に始まり、失われた期間にあったというフランスでのスーザンとの出会いなど、ロマンス小説的な話が続くので、僕はもう怠くなって投げ出したいような気分になっていったのですが、そこはさすがというか、途中から場面が変わるごとにどんどん話に引き込まれていきました。
まあ、この小説に関して言えば、これ以上何を書いても読む楽しみを損なってしまうので書けません。ただ、「逆転世界」や「魔法」で見たようなテーマは「魔法」でも健在であり、むしろ2作品に比べてかなりテーマに純粋な小説だと思います。
作者にぶんぶん振り回されたあげく遠くに放り投げられる、ジャイアントスイングみたいな小説なので読み終わった後にどうしたらいいのかモヤモヤしたような気分になりますが、それもまたこの小説の魔法であり魅力であるので、間違ってもネットで調べたりするとその魅力は損なわれてしまいます。
読む人は存分にモヤモヤするといいと思います。