2007年11月18日

親不知

親不知抜きました。下の右左を二本。抜きましたという言葉があんまり適切でない手術だった気もしますが。

五月頃に歯科に定期検診に言ったときに奥歯に違和感があったので、虫歯かなあと思ったら虫歯だったんですが、治療のためにレントゲンを取ったら、なんか親不知が大変なことになっているので抜いた方が良いですよ、みたいな話になった。

sirazu.JPG


みたいな感じ。このままでは、どう考えても前の歯に引っかかってまともに生えるわけがない。放っておくと、歯並びが悪くなったり、隙間が虫歯になるリスクもあるそうな。
ただ、何か結構面倒くさい形で埋まっているらしく、下手したら神経を傷つけるので大学病院の専門医の人を紹介しますよと言われました。では七月ぐらいに抜きます、といったまま十月まで放っておきました。
率直に言って怖かったからです。
まあ、そもそも歯の治療ってだけで割と怖いというか、一般的に歯医者って割と恐怖の代名詞になりがちなところがあるんですが、その中でも一番の難敵である親不知の更に面倒くさいヤツというだけでも結構うんざりというか、何でおれ? みたいな理不尽な思いに駆られます。

そんなこと言っても仕方がないし、就職してから治療するのも嫌だなあと思ったので、十月に諦めて大学病院で右下の親不知を抜いてもらいました。
手術室に入ってから、インフォームドコンセントなんですかね、治療の大まかな説明とあり得る後遺症との説明があり、それから実際に手術をするか聞かれました。それはいいんですが、おこる確率を言わずにあり得る後遺症を説明されたら、リスクを過大に評価してしまうような気もするのですが、それでいいのかなあ。やるリスクとやらないリスクを両方説明されないと、選択のしようもないよなあ。正直あごにしびれが残る可能性があります、みたいなことを改めて言われるとちょっとウッ、と思ったし、このまま帰りたいなーとか思ってしまったので。
いや、親不知ぐらいならべつに良いんでしょうけど、他の治療でもこんな感じだったらナンだなあと思います。

一回目の手術に関しては笑気ガスと麻酔が十分効いて痛くも何ともなかったし、手術の詳細も知らなかったので、わりと悠々としてました。おー頑張ってくれみたいな。たしか。
正直麻酔なしで奥歯の虫歯治療をしたときの方が百倍痛かった。あれは、ホント、ナンなんでしょうね。その後別の歯科で無痛治療したときは仏を見た気がした。渡る世間に鬼はない。

ただ術後は大変で、麻酔切れてからは久々に生々しい鈍痛を味わったし当日は血が止まらないし、口の内側の腫れた部分が奥歯の所まで張り出してものが噛めない、しかもそれが一週間続くというのでかなりしんどかった。周りにグチグチ言ったり。
いや、体は健康だしお腹はすくのに、おかゆとか柔らかいものしかまともに食べられないというのはどうして中々ストレスがたまります。周りが食事に行っていると美味いもん喰いやがって美味いもん喰いやがって美味いもん喰いやがって

というわけでしんどかったので、もう一本抜くの面倒だな嫌だなあとまた放置していたのですが、年末にかぶるのもいやなので、水曜日にえいやと抜いてもらって来ました。

二回目なので余裕かなあと思ったんですが、これがもー……本当に怖かった。なんでか知らないけど。多分、一本目抜いた後で、手術内容を何回か確認したり、ネットで色々調べたりしたせいで、手術中に自分の口の中で何が行われているか割とイメージできるようになったのと、大学病院で研修の人がいたのとがあると思う。あと今回笑気ガスあんまり効かなかったような気がする。

因みにどういう治療をしたかというと、まず麻酔を二三本奥歯の辺りにさす。当然親不知露出していないのでメスで肉をかっさばいて、歯と顎の骨を露出させる。さらに骨の中に埋まっているのでドリルで歯の周りの骨を削ったあと、何か親不知を砕いてバラバラにして引っかけてとりだすという感じでした。抜いた親知らずをもらって見てみたら、本当に五個ぐらいに砕かれてました。

手術中は汚れないようにと口以外のところに覆いがかぶせられます。それは勿論ありがたいんですが、何も見えないと無駄に想像力が発揮され、ああ、いまメスで奥歯の奥と横が切られたんだーとか。吸引されているのって血なんだよなあとか、無駄に考えたりします。
実習生がアシストしているんですが、「切開したら血を吸引しなさい」とか説明を受けてたり、「術野と私の間には絶対入れるな」みたいな注意を受けていたりする。これもちょっと怖い。
途中骨を削るためのドリルが登場するんですが、普通の歯科で使われるようなのと違うんですよね。普通は物凄い甲高い音がしますが、このとき出てきたのが妙に低いというか、木とかに穴を開けるための本当に普通のドリルみたいな音がするんですよ。頭の中ではDIYで使われるようなドリルが僕の顎の骨を削り取っているような図が思い浮かんでこう、自然と涙が浮かんできますよ。怖くて、ずれたらどうなるんだ! みたいな。僕の口どうなるんだよ。二十歳をとっくに過ぎた男が、怖くて涙ぼろぼろ流しているわけですよ。また口をあけるのも疲れてきて、ドリルの振動で顎ががくがく動いたりする。こえええ。
というわけで想像力が無駄な方向へ発展して困ったんですが、唐突に「電車の中でクソを漏らしたけど妄想の世界に逃げて事なきを得た」みたいなコピペを思い出して、妄想の世界に逃げ込んで落ち着きました。いやー大事ですね、妄想の世界。
その後は、色々考えていたら大分落ち着いてきたので大丈夫でした。

しかしまあ、アレですよ、手術中に先生が「ちょっと大変なので頑張ってくださいね」ということを二、三度言うんですが、なんというか、こまりますね。大変なのも頑張るのも僕じゃねーだろと。僕は口を開けてるだけだと。
頑張るのは先生でしょうと、言いたくなった。言えないけど。

というわけでやっていることを考えると、親不知の抜歯とか字面的におかしいだろうという話です。一度抜けば二度と生えることはないし、終わればどうってことないですが。
因みに二本目は一本目に比べれば腫れ方も全然ましで、次の日から普通に飯が食えました。よかったよかった。