2006年07月30日

日 記


映画見て部室行って帰って寝ておきて。


見たい見たいと思っていた時をかける少女を見ました。しかも友人の奢り。
こんなに良い映画をただで見てよろしいものか、という感じでした。ここ最近で見た中では(といってもそんなにたいした量見ているわけでもないですが)ダントツで面白い。某K氏をして、耳すまより面白いと言わしめたという事からもそのすごさは想像つく……わけもないか。
なんというか、見た後で殆ど満足感しか感じませんでした。あそこさえああだったらよかったのにとか、結構面白いレベルの作品にありがちな感想も浮かびません。もちろん時間ものSFですから設定にかんする疑問とかは探せばあるわけですが、そんなものを探すことが無粋に感じられました。
まず、絵や動きが良い。体の陰を塗らないとか、コントラストの強い背景とかちょっと変わった絵作りが全くいやみな感じにならずに、見ていて気持ちの良い画面に仕上がってます。夏の強い日差しや、うだるような暑さや、夕暮れの雰囲気を肌で感じさせるような素晴らしい絵です。動きも、もちろん凄い。とにかくよく動く。オーバーでありながら、不自然さを感じさせること無い、アニメの理想のような動きです。はつらつとした主人公の動き、引っ込み思案な少女の動き、キャラクターの性格が全身の動きの細かい部分にまで行き渡っていました。おそらく、全身のシルエットだけでも主人公の感情が、喜んだり、落ち込んだり、を感じることが出来ると思います。
キャラクターがいい。それはもちろんキャラクターを感じさせる動きによるところも多いのですが。ちょっと間が抜けてて調子者で元気な主人公の真琴も、秀才で頼りがいのある津田も、考えるより先に手が出る千晶も、津田が好きな後輩の嘉穂も、消化器振り回してぶち切れる高瀬も画面の中で生き生きと動き回り、存在感を主張しています。皆一貫した個性をもち、それに従って喜び、怒り、悲しみ、それぞれのキャラクターが本当に存在することを感じさせてくれます。作品中ぶっちぎりで惨めな高瀬ですら、見ている人間にある種の魅力があります。
そしてなによりも話が面白い。時間移動という能力を主人公が持っている以上、話の流れがわかりにくくなりそうなものです。しかしこの作品では、全く中だるみを感じさせないテンポの良さを終始保ちながら、ぼーと見てても混乱しないほどわかりやすい作品になっています。それでいながら、見ていてそうとは思えないほど本当にちょっとした伏線が重なり、後で決定的な結果を及ぼしていくという、重層的である種芸術的とすら思える話が展開されていきます。
主人公が時間移動能力をもった時のとまどい。理解したときの喜び。そして全てがうまくいくように思えたことが、突然どうしようもなく手に負えなくなってしまう。見ている観客もまた、その全てを真琴と一緒に感じることになります。時間移動がもたらす、ある種の全能感、それが見えないところから少しずつ綻び、気がついた時には破綻してしまっている絶望的な気分。それらは全て自然の摂理であるかのように、抗いがたく、当然の結果として主人公に襲ってきます。
物語は小さな山場を何度も何度も積み重ねていき、見ている人間を引き込み、最後のクライマックスまで引っ張り回します。僕は瞬きを忘れるほど話に引き込まれ、主人公の馬鹿みたいな行動を笑い、主人公の悲しみにつられて泣いていました。見ている人間に物語の妙を感じさせ、その上でそれを感じさせないほど深く没入させるというその見事な作り。
この映画はエンターテイメント映画の一つの極地だと思います。観客を楽しませることを突き詰めれば、それは芸術になるという真理をこの作品は強く感じさせてくれます。
かなり期待していって、期待を上回るものを見られるという久しぶりに嬉しい映画でした。

上映映画館がもの凄く少ない上に、話題になっているため、少なくともテアトル新宿ではちょっとうんざりするほど人が多かったですが、それを乗り越えても十分見る価値のある映画だと思います。自信を持って勧められます。


月舘の殺人 下。
始末編ですね。えーっと、僕の心の奥底がぶっちゃけ納得できないって言っているんですが。これはありなんですか!? 教えて偉い人。