2006年09月09日

近況


渋谷のブックファーストの二階で、「SF入門」みたいな平台企画をやってた。で、「塵よりよみがえり」と「ストームブリンガー」を購入。SF?
最近話題のから古典まで結構いい感じ。九月末までやっているらしいので行くと幸せになれるかもしれない。誰が興味を持つのだろうとか思ったけど、結構見ている人いる。

あと我が家の空調様が逝かれた。


「コラプシウム」ウィル・マッカーシー
前作「アグレッサーシックス」も素晴らしいSFだったけど、これもまたスゴイ。
ブラックホールを立方体に組み立てた崩壊子をつかって作られる”コラプシウム”によって社会が一変した世界の話。通信を超超光速化できるだけでなく様々な用途に使える(らしい)コラプシウム。用途によって自由自在に性質を変えることが出来るウェルストーン。そして人や、モノを自由自在に、スキャンし再生産することの出来る機器。
ファックスによって人は自由自在に世界を行き来できるようになり、またフィルターを使い、スキャンした人間のデータから病気などを取り去ることで、不老不死を達成した社会。もし不慮の事故で死んだとしても、ファックスのキャッシュから容易に再構成することが出来る。

と、どれ一つをとっても人間社会を大きく変えることが出来る技術が達成された世界が舞台になっている。
一方で社会制度は、民主制から王政に再び戻っている。人は個人個人が自分自身と社会に責任を持つかわりに、太陽系に一人女王をいだく事を選び、そのために地球に唯一残っていた歴史ある王家、トンガ王国の王女がソル女王国の永遠の盟主として強制的に選ばれてしまっている。

主人公は世界を一変させることになったコラプシウムの発明者であり、それによる膨大な財産と、社会的な名声につぶされそうになり、カイパーベルトにミニチュア惑星を作り隠遁し、そこでコラプシウムを使った実験を続けていた。
一方ソル女王国ではコラプシウムを使って太陽をぐるりと取り巻く輪を作り、太陽を挟んだ軌道の反対側同士の情報通信を超光速化させる、リング・コラプシターを作っていたが、事故によりリングは太陽に落下し始める。リングが太陽に落ちれば、太陽は最終的に死んでしまうが、有効な手段はとれないでいた。そこで隠遁していた主人公、ブルーノの所に女王から助けが求められることになる。

という導入。
うーん無駄に長くなった。

というわけで科学考証部分はとにかくハードSF。
正直読んでもわからない。そもそも話の中核にあるコラプシウム自体がちゃんとしたイメージはつかめない。途中にあるキャラクター同士の議論なんか付録に回されちゃっているし。
しかしそんなことはどうでも良くなるぐらい面白い。
科学考証の部分は、むしろアーサー・C・クラークの有名な言葉に託して気にせず、それが達成したモノを楽しめばいいと思う。ウェルストーン、ファックス、それだけでももちろん魅力的だけど、それがどう人を変えているかというのもまた、面白い。例えばファックスによって人は所謂ワープのようなモノが出来るようになっている。同時に人をデータ化して物質化するというプロセスにある以上、容易にバックアップ、そしてコピーを作ることが出来る。
イーガンならここでアイデンティティの話で一つはなしをぶちあげるところだけど、コラプシウムの世界の人間はそんな事は全く気にしない。まあ、そういう技術が出来たときならいざ知らず、もう何十年も経っているんだから当たり前かもしれないが、この世界では人は自分のコピーと自分自身がどう、と言ったことには悩まない。仕事が複数あればそれだけ自分のコピーを作り、終わればまた統合してまた一つに戻ったりする。
無論こういった社会の変化を取り扱うSFはいっぱいあるだろうけど、その変化にキッチリとした基盤を作り、そしてその変化を単なる前提として、非常に面白い娯楽小説を作り出しているのは、ウィル・マッカーシーすげえと言う話になる。

この人の作品には最先端のSFであると同時に、舞台設定などに関して言えばむしろ古い印象を受ける。アグレッサーシックスは宇宙の戦士等、所謂宇宙人との戦争物という古くさい題材だけど、多くの場合戦争の理由に必然性が無くなるところを筋の通った理由をつけ、それを物語の殻となる謎とすることで、ミステリーであり、ハードSFであり、エンターテイメント小説である新規さを感じさせる良作にしている。
一方コラプシウムは、レンズマンやキャプテンッフューチャーといったスペース・オペラ的な世界を舞台に、荒唐無稽さなガジェットや理論や話展開になりがちなスペース・オペラに確かな理論的な基盤をあたえつつ、スペース・オペラの魅力である壮大なキャラクターや話の広がりを両立し、やはり新規でありながら懐かしい、親しみやすい魅力、面白さも持っている素晴らしい小説になっている。

まとめれば、ハードな部分はイーガン顔負けであり、一方キャラクターや話はキャプテンッフューチャーにも匹敵するエンターテイメント、という感じだろうか。

ハードSF的な部分をのぞけば、十分キャラクター小説としても売れるぐらい良くできている。そういう意味で、話題になった表紙の装丁にも好意的な評価をするべきなのかもしれないけど、まあ、僕に限らず読み終わった人はとりあえず一言、何でお前が表紙なんだとつっこみたくなるはず。


「順列都市」を適当にとばしつつ読み返していたんですが、オートヴァースのランバート人が自分の世界を統一的に理解できる法則を発見したところは、「統一理論」のアレとアイデア的には似ているのかなと言うか同じなのかと思ったけど、「統一理論」をあまり理解してないので何とも言えない。


セスタス12
んー勝っちゃうんだよなあ。結局。いやまあ。うーん。
セスタスがそこまで強いことが納得できない。
格闘描写の上手さはいつも通り最高。


二十面相の娘1
話は、悪くない、と思うんだけど、とにもかくにも読みにくい。
でも、もの凄く雰囲気はあるんだよなあ。なんなんだろうこれ。
残念。


ウは宇宙船のウ
ブラッドベリの「ウは宇宙船のウ」と「十月はたそがれの月」から八編の短篇を萩尾望都が漫画化した作品集。
萩尾望都すげえ、で終わってもいいよな気も。ブラッドベリの短篇の雰囲気を見事に画像化している。すげえ。
しかし「恐るべき子供たち」を読んだときも思ったけど、萩尾望都の緻密な絵は文庫サイズだと読みづらい。普通の単行本サイズで欲しいなあ。


コミティア77の見本誌読書会に行った。
昼頃まで忘れていてあわてていったんですが、到着してみるとそこそこ広い部屋に机が並べられ、それぞれにはうずたかく同人誌が。そしてそれらを黙々と読む人たち。
ちょっと帰りたくなった。けどせっかくなので。
しかし圧倒的な量に、みるみるうちに衰弱しつつ、最初のうちはぜんぶそこそこまじめに見ていたけど、どんどん見切りが早くなる。
しかし何というか……。まあ、僕も頑張ろう。
何故か知らないけどもの凄く疲れたので、帰ったら寝てしまった。