2006年10月25日

最近読んだ本

□ロバート・F・ヤング「ジョナサンと宇宙クジラ」
SF短編集。
表題作は有名なので名前はずいぶん前から知っていたけど読んだことはなかったのですが、新装版が出たのを機会に読んでみました。収録されている作品は大体人や土地や過去への愛情とか郷愁をテーマに、SF的な味付けをした作品でした。グレッグ・イーガンがアイデンティティを多くの作品のメインテーマに置くようなものでしょうか。
「いかなる海の洞に」や、「リトル・ドッグ・ゴーン」、「サンタ条項」や表題作などは印象に残りましたが、どうも対象年齢層がずれているような気もしました。
もう何十年か後に読みたい作品。

全然関係ないけど、SFを読んでいると、原書で読めたらなあと、時々思います。いや、頑張れば読めるんだろうけど、実際に読み始めると面倒くせー! それなら訳書を読むぜ! と言う気分になり読むのを止めてしまんですよね。
SFだけでも訳書や日本人作家の本が読み切れないほどあるし、ジャンルを限定しなければいくらでもあるわけで。訳書はイヤ、原書で読むって人は結構いるんでしょうし、そこまで好きではないと言えばそうなのかも。まあ、共著だと思えばそんなに気になるものでもないとは思いますが。

□新城カズマ「ライトノベル「超」入門」
「蓬莱学園」シリーズや、最近では「サマー・タイム・トラベラー」の作者であり、現役のライトノベル作家である新城カズマが、ライトノベルと呼ばれるものはそもそもいったい何なのか、と言うことについて述べた本です。
niftyサーブにおいてどうやって「ライトノベル」という名称がつけられるに至ったか、から始まり、ライトノベルの特徴と呼ばれる事の多い、アニメ的なイラストがどうやって始まったかや、その意義と絵柄などの変遷。もう一つの際だった特徴であるキャラクターという考え方と、やはりその意味、特徴的なキャラクターの類型の紹介という感じで続き、最後にライトノベルが所謂ジャンルではなく手法に近いものであり、それはある程度普遍的に存在するものである、という感じでライトノベルを概説しています。
作家がどういう風に考えているか、と言うのがわかり興味深かったです。いやまあ読者の側からすれば面白そうなら読めばいいんですが。

□ロバート・アーリニック「トンデモ科学の見破り方」
あ、この人もロバートだ。
内容は題名通り。「宇宙の始まりはビッグバンは間違い」や、「銃を普及させれば犯罪率は低下する」、「エイズの原因はHIVではない」等、ある程度有名でトンデモと呼ばれることの多い説を例に、トンデモ科学をどう見分けるか、と言うことを解説している本。
とりあえず僕の呼んだ限りでは、まず反証不可能な理論、パラメータが多すぎる理論などは怪しむべきであり、また証拠の妥当性にも気をつけよう、と言うのがポイントかなあという感じです。特に統計データは取り上げ方によっては全く正反対の事実を示すことが出来るので、慎重に扱わなければならないというのはかなり大事だと思います。相関関係があるように見えても、それは因果関係があるわけではないし、そもそもその相関関係自体が恣意的に作られたものである事も多いという話です。
有名な話ですが、少年犯罪が増加しているという事実が統計データから捏造されている例もあります。そういうデータを元にマスコミや本やネットで知った顔で語る人もいて、それが一般に流布してしまうことも多いんでしょう。
人から聞いたアイデアですが、統計データを扱うのは資格制にして、マスコミなどで統計データを出すときはそのデータを作った人間を公表しなければならないとすると少しはましになるのかなあと思います。
ソレはソレでまた別の問題が出るのかも知れませんが。

他にも色々書かれていて、パラダイムシフトをもたらすような理論では、常識に従うわけではないので常識を基準にするなとか。「証拠がないことは、ないことの証拠ではない」とか。「オッカムの剃刀」も常識の一側面と見なせるとか。色々興味深い話は多いかったです。

トンデモ理論とそうでないものの違いについての一つの指標を与えてくれるなかなかいい本でした。