2008年08月10日

どっかん。

■「警視の休暇」
イギリスを舞台に、休暇をとっていた警視が殺人事件に巻き込まれるという割とベタベタなサスペンス。全体的に緊迫感がないし、話も散漫だし、落ちも脱力と何とも言えない感じだったけど、キャラクターが割と雰囲気あるのと、イギリスの会員制ホテル(?)みたいな舞台が面白かったのでそこそこ読めました。

■「バッキンガム宮殿の殺人」
バッキンガムって響きが格好いいですよね。「罰金ガム」ってかんじで。カーペットにガムをはき出してはいけません。っていうかんじで(ネタバレ)。
シリーズ名が女王陛下のメイド探偵ジェインということで、メイドオタの人方にはお薦めできそうです。いや、どうだろうか。

カナダからイギリスにやってきたヤングウーマンが何だかんだでバッキンガム宮殿のメイドとして雇われ、ひょんな事から女王陛下の手先となって殺人事件の調査を行うというミステリ小説。
特に強い印象を残すわけでもないが、読後感も悪くない一作。ミステリとしても、異文化訪問的な意味でも楽しめたと思う。作者が英国王室フリークという事もあって宮殿や王室周りの描写はずいぶんとしっかりしてました。キャラクターもみんなそれぞれ魅力的で読んでいて楽しい。

■「Googleを支える技術」
大分昔にGoogleっていう検索エンジン結構良いらしいよと聞かされて、気が付けば気持ち悪いぐらい大きくなっている。犬年を感じます。。
Googleのイメージというとdon't be evil(笑)とかどうやってあんなに儲かっているの? とか広告代理店乙とかグーグル八分とかウェブ2.0とか何とか進化論とか。
だいたいiPhone翼賛会ど同質な感じで称揚されていたりとか、それに対する嫌悪感とか、なんとか言われつつ、しっかりウェブに欠かせないインフラになっていると思わせつつ実のところ日本ではそうでもないとか。最近スタートアップ買収してばっかりで自分でパッとしたサービス作れていないよね、とか。オフィスが頭おかしいとか。あれぐらいスペース欲しいとか。
給料良さそうとか。
そんな感じ。

というイメージとはあんまり関係なく、Googleが素敵な負荷をどういった技術を使って裁いているかと言うことについて、Googleが出している幾つかの論文を元に砕いて説明している本。情報発電所とかそういう意味不明のワードは出てきませんよ−。
検索エンジンの基礎的な知識からはじまって、初期のGoogleのシステム構成と成長に従ってどうやってスケールさせていったか。現在のGoogleの巨大クラスタを支える基礎システムであるGFS、Bigtable。分散データ処理で超有名なMapReduceについて一通り説明した後、データセンタなどハードウェアのコストがどうなっているのかについてという感じで、Googleが技術的な方面で話題に上りやすいことについて一通り以上書いてあり、きちんと読めばそのあたりおおざっぱな知識はつきます。
ちゃんと読んでないけど。

実際の所Googleのクラスタシステムってどの程度汎用性があるんだろう。検索にある程度特化して作っていると思うんだけど、どの程度普通の用途に使えるのか。Hadoopが出てきたり、楽天がRubyで何しようとしているというニュースがでたりGFSとかMapReduceが云々言われるし、使いではあるんだろうけど。
一般的なサービスにどういう処理が必要なのかあんまり分かっていないので全然分からん。

個人的にはデータセンタとかHDDとかのハードウェアの話も結構面白かった。そういえばいろんな企業が寒い地域にデータセンタを作るとか言う話があったけど、どんなもんなんだろう。コンテナ型のデータセンタとかも面白いけど、アメリカンだよなあ。


■「母が重くてたまらない」
足腰が弱ってきているのに精神的ストレスから暴飲暴食を繰り返し、ついには0.1トンの体重を誇りすっかり歩けなくなった母親を背負って働く三十代女性の物語。
そら重いわ。
というのは嘘です。

一見上手くいっているように見える母娘関係の中で潰されそうになる娘のカウンセリングを通して、それがどう云ったモノなのかを考え、解決策を考えていく本。
上手くいっているにせよそうでないにせよ親と子供の関係は特別だよなあと言う当たり前の感想を抱いた。尊敬する人は、両親、みたいなのもよく見るし。

あと多少親子関係から離れるけど、人に何かをしてあげるという行為の押しつけがましさについて考える。それを自覚的にやれば影響力の武器にある返報性の原理にあたるのだと思う。それもどうかと思うが無自覚にやられればそれはそれで手がつけようもないよな。
僕が何もしないのは、単に無精だからですが。


■「百年の孤独」
ずいぶん前から読みたいなあ! とか思っていながら高くて手を出さなかったのですが、桜庭一樹がガルシア=マルケスなど南米文学に影響を受けているという話を読んだせいで、神保町に拠ったついでに思わず買ってしまった。いいよね! せっかく神保町に来たんだし! みたいな感じで。
面白かった。時間を忘れて読んでしまった。あんまり集中して読んでいた上に凄い長いので終盤目はしょぼしょぼするは頭は痛くなるわ、結構厳しいことになったけど、それでも泣きながら一気に読みました!! (ドライアイ的な意味で)

神話と迷信の霞の掛かった街、マコンドの草創から隆盛、そして崩壊に至までを街に結びつけられたブエンティア家を通じて描いた一大歴史絵巻。氷をすら誰も知らずジプシーが魔術を使い、絨毯で空を飛んだ時代から、戦争を経て現代が外の人間の形をとって進入し街は成長し繁栄し拡大し、やがて幾つかの事件を経て、決定的に崩壊する、神代の時代から歴史現代までを百年という短くも長い期間を経て駆け抜けていく。
ページをめくる度に怒濤の如く進んでいく物語のスピードに目眩がする。あっという間に人が死に、生まれ、物語の舞台に上がり、そして突如下りていく。いなくなったと思った人間が再び舞台に現れ決定的な役割を果たす。無数の人間が複雑に人生を交わらせる様にあまり意識したことの無かった群像劇の面白さを強く実感させられた。

家系が話の中心の柱となっているけど、個人的には街こそが主人公に思えた。人が変わり時代が変わると共に、まるで違う様相を見せる街の顔も一つの大きな楽しみに思えた。脳内にシムシティやらAOEやらCivilizationやらの町の発展が浮かんだのは内緒だ!
あと人が同じ名前過ぎて困る。一体何人アウレリャノとアルカディオいるんだよ。気づいたら家族が増えていたとか、子供の扱いとか、その他もろもろ、色々全く違う文化って面白いよねー。

そういえば題名でネタバレというウルトラCをかました「火星夜想曲」の売り文句は火星年代記の感動をよみがえらせる、だったけど(たしか)、百年の孤独の感動をよみがえらせるとかで良かったじゃないかと思う。で、タイトルは「荒涼街道」にする。
でもそれだと自分も手を取らなかっただろうなあと思うと、編集部が間違っていたわけではないんだよなあ。
で、ちょっと見返そうと火星夜想曲を取り出したら傷みまくっていたのでちょっと凹んだ。引っ越しの梱包雑にしすぎたな。


■「これならわかるネットワーク」
通信の基礎からインターネットについてと言うところからはじまってDNS、ルーティング、TCPといった比較的高度な話まで解説している初心者向けのネットワーク本。もう一回基礎的なところからネットワークを理解したいなあと思って、一番簡単且つ嘘のなさそうな入門書をということで買って読んでみました。だいたい想像通り、良い本でした。

インターネットの説明の最初は、もちろんARPAのことが紹介されるんですが、この本ではそれ以前になぜARPAが作られたかという説明として、スプートニクがアメリカの中央集中型アーキテクチャの爆撃機監視システムSAGEの有効性を覆したから、という話がありポンと膝を叩きました。
この本ではこのように、ネットワークに関わる各技術が、なぜそのような形になったのか、そうしなければならなかったのかと言うことについて歴史的な流れを含めて説明しているので非常に納得しやすく、わかりやすいです。
著者自身も書いていますが、トップダウンに今ある技術を説明するのではなくその成立過程を説明することでその意味、とあるいは現在は不合理でない技術が広まっている理由まで分かりやすく解説しているという、入門書としては珠玉の出来ではないかと思います。

ただちょっと、興味があまりない人間が読む入門書としては難しすぎるのかもなあ、と思うところもありましたが。

■「とある魔術の禁書目録1〜6」
なにかこう、ラノベが読みたい! という気持ちになったので、とある科学の超電磁砲から前々から気になりつつもシリーズ長すぎだろJKという気分で買っていなかったインデックスに手を出してみた。超能力を開発することを目的として作られた巨大学園での超能力者と魔術師とそんな彼らの力を全部無効化する主人公が、色々事件に巻き込まれて頑張ってく話。基本バトルモノということで、誰か書いていたけど少年漫画のような雰囲気を漂わせています。
主人公はとにかくぼろぼろになりながらも不屈の精神と幻想殺しの右手で女の子を助けるというのが基本。オカルトチックで知的なキーワードをちりばめて雰囲気を出しつつ、基本マッチョな展開です。
ああ、これは良い中二病だなあというあれな感想を抱いてしまった。全般的に描写がクサいんですが、なかなか上手いことはまっているように思いました。

とりあえず先月の節約のために6巻でひとまず置いたのですが、まだまだ十巻以上あるんだよなあ。どうしようかなあ。

■「とらドラ! 1〜7」「とらドラ・スピンオフ!」
なんかこう、ラノベ(略
というわけでこれは良いラブコメですね。料理や裁縫が得意で超が付くほど綺麗付きで家庭的な男なのに、凶相で不良だと誤解される主人公と、ちっちゃくて人形のように美人なのにハリネズミのような性格のヒロインがひょんな事からお互いの親友を好きであることを知り、世にも奇妙な協力関係を結んでラブコメ珍道中を歩きゆくお話。
主人公の設定からして、エ、エンジェル伝説!? とか思ったのは多分万人がそうであるからしていいんですが、安心なことにこっちは基本常識人です。
そんなわけで、大河カワイイねとかそういう感じと、結構盛り上がるお話づくりでどきどきハラハラしながら楽しめる。八巻買ったので読むのが楽しみ。

そういえばインデックスもとらドラ!もアニメ化するようです。

■「ブラック・ラグーン シェイターネ・パーティ」
虚淵玄がこの漫画をノベライズ! という素敵な&超お似合いの組み合わせで贈られるブラック・ラグーンの小説版。
もとの作品も犯罪都市を舞台にホットパンツのねーちゃんやスーツや銃持ったシスターやらメイドやらが見得を切って暴れ回るケレン味たっぷりの漫画なんですが、小説ではそういった雰囲気を十二分に再現した上に、更に更に癖の強いキャラクターたちが縦横無尽に駆け巡る、原作に挑戦ししっかりと成功しているノベライズとしては理想的な一作。
カリブの海賊やら忍者やらもーなんなの!? という感じだけど違和感ゼロ! すごい! この人のリベリオンの二次創作ゲームも面白かったし、今更ながらFate/Zeroが激しく気になり出しました。

しっかしガガガのノベライズはクオリティ高いなあ! どっかの×××とかも見習って欲しいよ!

■「AURA 〜魔竜院光牙最後の戦い〜」
「邪気眼」を題材にしたボーイミーツガールな青春小説。これは読んでいて心に痛い。最初は5ページぐらい毎に本を置いてしまっていたんですが、途中から引き込まれて南極あたりから聞こえてきそうな奇妙な声で鳴きながら最後まで読みました!
「人類は衰退しました」でしか田中ロミオを読んだことはなかったのですが、こういった方面のも面白いのを書くことが分かったので、CROSS†CHANNELあたりをやってみたいです。

■「宇宙旅行はエレベーターで」
宇宙開発にかかる予算の大部分は、地球の重力圏から脱出するために使われる。それは使われる打ち上げロケットというモノが非常に燃料を食いコストが掛かるモノだからである。脱出速度を稼ぐためだけにお金が掛かりすぎるので、宇宙開発が進まない。かつては月にもたどり着いたのに、今では地球の低軌道を行ったり来たりしているだけ。
もし、バベルの塔のように、非常に高い塔を建てて宇宙まで至れれば、非常に安く地球を脱出することが出来る。しかし勿論、そんな塔などを建てればインテリジェントさんが怒って壊さなくても、物理法則さんが冷たい方程式に基づいて倒壊させてしまう。
そこで出てくるのが宇宙エレベータ。
地球と静止軌道、そしてその先までをケーブルで結び、そのケーブルを使うキャビンによって地球上と宇宙を結ぶエレベータを作るのが、低コストな地球脱出の唯一の手段とこの本は云う。10万キロ!のケーブルで地球と宇宙を結びつける。そのコスト効果は凄い。ロケットで打ち上げるのに比べて、なんと95%も安価になる。
打ち上げのコストがココまで劇的に下がれば、予算の大部分は宇宙にでた後での活動に使うことが出来る。果てのない新しいフロンティアが誕生する。
そして宇宙エレベーターはカーボンナノチューブという新素材の発見により、空想科学の範疇を超え、現実に十二分に可能になった。更に云えば実際に計画は進行中であり、しかもたかだか一兆円で実現することが出来る。

この本ではそんな宇宙エレベータを実際にその計画に携わっている人物があらゆる角度から検証している。宇宙エレベータとは何か、その実現性はどれほどか、素材はどうするのか、何処に作るのか、どうやって作るのか、自然災害やテロに対する安全はどうやって保証するのか、幾ら掛かるのか、何処が作るのか、出来たらどういう事が可能になるのか等々等々宇宙エレベータを軸に話題はかなり多岐にわたる。単純に工学的に可能かと言うだけではなく、経済的、政治的な所まで踏み込んで現実性を論じている。興奮した。
宇宙エレベータを所有するモノは宇宙開発で圧倒的な優位に立つことが出来る。そして実現のめどは付いてきている。後は何処が作るかだが……日本主導ではないんだろうなあ……。

そういえば宇宙エレベータを赤道上に作らなくて良いというのは知らなかった。軌道エレベータSFだとこの本に出ているのに加えて小林泰三の「天体の回転について」表題作を入れときたいな。あれも面白い。

■「倉本」
倉田英之のブレーキの壊れた欲望の発露と快楽とある種の鬼気に満ちた散財物欲エッセー。
正直散財というレベルではない。物欲番長というとスタパ斉藤が思い浮かぶけど、そんなものじゃない。
まず初っぱなから奮っている。夏のボーナス300万円(!)のうち175万円がいかにして一ヶ月以内に消え去ったかというレポートだもの。そのうち100万円弱が本とDVDに消えているという。
エッセーが面白いかと言われれば、興味からずれる部分も多かったのだけど、なんというか行くところまで行った(OR行こうとしている)人がこの世界に入るんだなあと言う感動を覚えました。
自分はこういう人生は歩めないなあと思うんですが、ちょっとあこがれはします。とはいえ、しかし、ココまで切り捨てて行くのは出来ないなあ。

あと倉田英之が会ったという読子そっくりの人というのを見てみたい……。

■「果てしなき流れの果てに」
小松左京の有名な時間物のSF。何で買ったか全然思い出せないけど、なんか家にあった。

そういえば小松左京読んだの初めてだなあ。それなりに面白かったのですが、今の僕は斜めに読んでしまうのでなんとも。高校ぐらいに読んでおけば良かったかなあ。あと文章が結構疲れる……。
内容は永遠のおわりとか世界の中心で愛を叫んだけものとか百億の昼、千億の夜とかタイムシップあたりに雰囲気が似ているように感じた。
いくつかね。

どーでもいいけどGainaxの最終回でよくSFのタイトルが使われるけど、内容とはほんっっと関係ないよな。
「世界の中心で愛を叫んだけもの」は傑作。最初四回ぐらい挫折したけどなー。