2008年10月25日

僕らの気体

人間の体内で発生する気体は、口からげっぷとして、あるいは肛門からおならとして排出される。人間はそうやって体内の圧力を一定に保とうとする。

平等主義者であることについては人類一であると評されるトポロジストたちは、人間と下水パイプは実に平等であると云う。実際そうであるように。

であるから、吐き出すことを止められたげっぷは、口腔から食道を通り胃に戻り十二指腸、空腸、回腸を通り抜け盲腸、結腸、直腸にいたり、おならとして肛門から排出される。

閉めた肛門に阻まれたおならは直腸から結腸、盲腸を遡り、回腸、空腸、十二指腸をくぐり抜け胃を通過し、食道にいたりげっぷとして口から排出される。

たとえば遠い宇宙からくみ出した水を吐き出し続けるホワイトホールを内包する下水パイプが両端を塞がれた場合、遠からず破裂するだろう。

一酸化二水素を観察すると分かるように、物質は固体や液体であるときに比べて、気体であるときの体積は驚くほど大きい。体内の物質の一部が小さな生物のために気体に変化すれば、それは気体を吐き出すホワイトホールと同等のものとなる。

げっぷもおならも我慢し続ける人は、刻々と体積を増しつつも逃げ場を失った気体のせいで大きくなりすぎた内圧に耐えられずぶくぶくと膨らみ、塞がれた下水パイプのように破裂する。

げっぷをする人間をマナー違反とたしなめる人間も、おならをした人間を指を差して笑う人間も、恥を知るべきである。あなた方がやっているのは、遠回りだが殺人である。