2013年06月19日

米澤穂信面白い

米澤穂信の刊行されている本全部読み終わった。さすがに纏まっていない短編は読んでないけど。17冊読んで、個人的にはハズレが全然無かった。

ジャンルとしてのミステリには基本的に全く興味が無くて、進んで読むことが全くなかった自分にとっても、米澤穂信の作品はかなり良かった。
ミステリとしてのトリックなり謎解きなりの面白さそれ自体が目的になるわけではなく、本題を展開するための非常に上手い道具になっている。謎の在処がなんというか、上手い。そのためか個人的にイメージするようなミステリ臭がないのがいい。
まあ、それは自分の謎=殺人方法であるというミステリジャンルへの偏見なんだろうけど...。ちゃんと探せば自分が読んで面白い作品は沢山在るんだろうな。そこは反省する。

まずキャラクターが良い。いかにもいそう、というキャラクターは少なくてキャラが立っていてむやみに教養があって頭の回るキャラも多いんだけど、だからというか読んでて居てとても小気味が良い。嫌なだけの人間がいない。それぞれ違った方向ではあるけど傑物が多いのが非常に良い。
文章が平易でとても読みやすい。何というか、空気のように自然に読めてしまう。読んでつっかえるところが無いので、何時間でも読めてしまう。無茶苦茶旨いんだと思う。
話の展開の仕方も上手い。謎の提示の仕方が上手いからか、とにかく先が気になる。休みの日の朝に何となく手にとって気付いたら読み終わっていたと言うことが何度もあった。一度ノリ始めると、ヤバイ止まらない状態に。
オチが秀逸。この辺は何というか、個人的に小林泰三に近い何かを感じる。読者を驚かせてやろうという意地の悪い、というかサービス精神というか、そういう何か。大団円にはさせないぞというポリシーがあるのかも知れない。とにかく読後感にモヤモヤするものが多い。けどそれが良くてついつい次の作品に手を伸ばしてしまう。
新巻出るまで次に読むの無いけど……早く出ろ。

特に気に入った本
・儚い羊たちの祝宴
・ボトルネック
・ふたりの距離の概算
・折れた竜骨
・犬はどこだ

儚い羊たちの祝宴。上流階級を舞台にした古風な雰囲気と乾いた残忍さ、最期に綺麗に纏まる各短編の完成度の高さが良い。
ボトルネック。主人公が自分がいなければ自分の周りがどれだけ幸せになれたかを見せつけられるというキッツイ内容。存在論的危機を感じさせる。存在論が何かしらないけど。
ふたりの距離の概算。他の古典部シリーズもいいんだけど、どうもアニメの印象が強くて...大団円というわけでは無いんだけど、ボトルネックと比べると主人公が世界を広げようという意思を持っていくところに希望を感じる。話の展開も好き。大日向友子また出て欲しい。
折れた竜骨。ガチ歴史ファンタジーで本格ミステリーをやった良作。ファンタジーとしても秀逸でありつつ、作者の作品の中でいちばんいかにもなミステリをしているのが面白い。
犬はどこだ。ちょっととぼけた雰囲気のコミカルな内容からの急転直下の展開が刺さる作品だった。